この建物は、大阪府交野市の私部(きさべ)という所に建つ築130年の古民家です。
2016年の秋にお客様から相談を受け、調査・実施設計を行い、2017年の8月から伝統工法で再生工事をはじめ、2018年2月に建物本体工事が完成しました。敷地内には、「つし」2階の主屋を中心に長屋門と二つの蔵がある立派な建物です。
そんな大きなお屋敷にお祖母さんがお一人でお住まいだったのですが、この度息子さん夫婦とお子さん二人が住む、二世帯住宅として生まれ変わりました。
長屋門
建物は、南側の玄関と「通りにわ」を挟み、東側に応接間(元は納戸)、西側に庭に向かい三つの和室がつながり、「奥の間」が床の間がある座敷、「中の間」は仏間だったのですが、その「中の間」の縁側部には元は客人用の玄関がありました。今回の計画では、その縁側部に玄関を新たに設け、玄関を入って「中の間」その左側に「奥座敷」、正面から左手奥をお祖母さんの生活ゾーン、右側を息子さん家族のゾーンとしました。
新たに設けた玄関
以前の客人用玄関にあった「舞良戸」を復活
「中の間」左側に「奥座敷」が続きます。
築130年の石場建て(石の上に柱がのる)の伝統工法の建物ですが、それぞれの柱のレベルもタチもさほど悪くなかったのですが、唯一床の間の壁一列が60mmほど下がっていました。原因は多分、壁裏の細い路地に下水管が敷設された際に石垣ごと下がったのではと思われます。
そのためにその部分にベタ基礎を打ち、ジャッキアップして60mmほどあげました。
そして床脇を仏間としました。
南側の元の家人用玄関と玄関横の座敷は、庭に面し明るいので息子さん家族のダイニングと居間にしました。
構造的に重要な「差し鴨居」と梁表しの「大和天井」はそのまま活かしています。
元応接間だった部屋は、梁を補強してこども部屋に。
吉野杉張りのトイレ
床がコルクタイル張りの洗面脱衣場
こちらはお祖母さんの居住空間。
キッチン・風呂洗面・トイレの水回りも別に設けています。
ダイニングキッチンが北側にあるのですが、一部減築した東側に広いウッドデッキの物干し場を設けたので掃出し窓から十分な採光が得られます。
また古い建具も傷んだところを直しできるだけ再利用しています。
以前の庭の樹木中に埋もれていた三体の小さなお地蔵さん、新たに庭の西端に祀られ、花が供えられていました。