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【第9回】阿波国 吉野川流域の風物

阿波国(徳島県)を流れる「吉野川」は、高知県と徳島県を流れる1級河川。

吉野川水系の本流で流路延長は194kmで徳島市の紀伊水道に注ぐ四国最大の河川であり、「四国三郎」の異名を持つ日本三大暴れ川の一つである。

今回は、私が過去に巡った吉野川流域の風物の一端を紹介したいと思う。

【第9回】阿波国 吉野川流域の風物

吉野川が紀伊水道に注ぎこむ河口の町「徳島市」、ここでの風物を代表するのは、なんといっても毎年8月12日~15日に開催される「阿波踊り」。

太鼓・三味線・笛・鉦・笛の鳴り物と二拍子の軽快なリズムに合わせ「ヤットサァー ヤットサァー ヤットヤット」「踊る阿呆に見る阿呆 同じ阿呆ならおどらにゃソンソン・・・」のはやし唄にあわせ踊る。

2015年の「藍場浜演舞場」での演舞、一番目は有名連の一つ「阿呆蓮」。
阿呆蓮のシンボルは、肩に染め抜かれた破れ傘。男たちは手ぬぐいをかぶり、提灯を片手に乱舞。女踊りは躍動的で、女踊りとしては唯一の奴踊りを演じてくれる。

2015年8月12撮影

【第9回】阿波国 吉野川流域の風物
【第9回】阿波国 吉野川流域の風物

「蜂須賀蓮」のしとやかで優雅な女踊りと色っぽい女ハッピ踊り。

【第9回】阿波国 吉野川流域の風物
【第9回】阿波国 吉野川流域の風物

鮮やかな扇を使った可憐な踊りの「阿波扇」の子供達。

【第9回】阿波国 吉野川流域の風物

夏の徳島の町は、「阿波踊り」一色。

【第9回】阿波国 吉野川流域の風物

吉野川を挟んだ徳島市の対岸に、青色染色の「藍(あい)」の町「藍住町」がある。

「阿波藍」は、阿波の僧侶が鎌倉時代に美馬郡で唐から輸入した藍の苗を植えたのが最初と言われている。

藍住町域の地は、吉野川の氾濫のたびに肥沃な客土が堆積した土地であるため藍の栽培には最適な土壌であった。

その藍住町には、地域歴史博物館である「藍の館」がある。
ここでは、江戸時代から残る大藍商の奥村家屋敷、伝統的な道具や栽培から加工・藍染までの過程など藍の歴史を知ることが出来る。

2015年4月5日撮影

【第9回】阿波国 吉野川流域の風物
【第9回】阿波国 吉野川流域の風物

また、職員さんの指導のもと子供も藍染の体験ができ、自分だけの藍染作品が作れる。

【第9回】阿波国 吉野川流域の風物

孫たちの作品。

【第9回】阿波国 吉野川流域の風物

藍の栽培や加工のためには、今日では想像も出来ないほどの労働を必要としたそうで、藍作農家の人たちはよく働くことで知られて、藍園から嫁をもらいたいと良く言われていたとか。

【第9回】阿波国 吉野川流域の風物

「藍の館」から西に吉野川を35km程さかのぼると川の左岸に「脇(わき)町」がある。
徳島県美馬市の「脇町」は、徳島県の西部、吉野川の中流域の町で、吉野川左岸を鳴門に至る「撫養(むや)街道」と高松へと通じる「讃岐街道」が交差する要衝の地である。

また江戸時代には、吉野川の船運を利用して阿波特産の藍の集散地として発展し、明治以降は繭(まゆ)の仲買および生糸の生産の中心地として栄え、藍商、呉服商などの商家が軒を並べる町となり、今も当時の面影が色濃く残っていて国の伝統的建築物群保存地区に選定されている

2021年6月21撮影

【第9回】阿波国 吉野川流域の風物
【第9回】阿波国 吉野川流域の風物

街並みを構成する意匠的要素として、屋根は「本瓦葺」、壁は漆喰の「塗籠仕上げ」の重厚な造りで、「格子」や「虫籠窓(むしこまど)」、そして本瓦葺漆喰塗の「卯建(うだつ)」が特徴的である。

【第9回】阿波国 吉野川流域の風物
【第9回】阿波国 吉野川流域の風物

「卯建(うだつ)」は、もともと隣家からの火事が燃え移るのを防ぐために造られた防火壁なのだが、江戸時代中期から家紋や細工が施され装飾的な意味合いが濃くなった。
「うだつが上がらない」とは、「卯建」を上げるためには、それなりの費用が必要だったことから、いつまでも出世しないことが語源となったといわれている。

【第9回】阿波国 吉野川流域の風物

通りに面して「ミセ」がある主屋が建ち、その背後に藍蔵や土蔵があり敷地の端には石垣が積まれ、古くはその石垣に沿って吉野川が流れていたそうである。

【第9回】阿波国 吉野川流域の風物

「四国三郎」の異名を持つ日本三大暴れ川の一つである吉野川、その吉野川に架かる増水時には沈んでしまう「潜水橋」。

脇町からさらに吉野川の西にさかのぼった吉野川中流域の右岸に、つるぎ町「貞光(さだみつ)」の町がある。
ここも商業と交通の要所として江戸時代中期以降「在郷町」として栄えた町で、昭和30年頃まで山村の葉煙草・繭(まゆ)・こんにゃくの収穫と引き替えに、農具・日用品・薬品などを購入する人々で賑わったそうである。

町の中心部を走る「一宇街道(剣山街道)」沿いには商家が軒を並べ、吉野川北岸の「脇町」と同様に「卯建(うだつ)」がその繁栄を象徴している。

2021年6月20日撮影

貞光の「卯建」は、一層のものもあるが二層のものが多くそれが特徴的である。

【第9回】阿波国 吉野川流域の風物

「貞光」の町から吉野川沿いを西に走り、池田町で直角に南に折れた川をさかのぼると山が迫り、荒々しい岩肌の「大歩(おおぼけ)渓谷」が現れる。
ここを訪れたのが2015年の4月、「端午の節句」をまえに鯉のぼりが渓谷を泳いでいた。

2015年4月4日撮影

【第9回】阿波国 吉野川流域の風物

大歩危峡には遊覧観光船が運航されていて、川面から国の天然記念物に指定されている渓谷の荒々しく雄大な景色が楽しめる。

【第9回】阿波国 吉野川流域の風物

大歩危から吉野川の支流である「祖谷(いや)川」をさかのぼると1000m級の山々に囲まれた日本三大秘境の一つで、平家の落人伝説に満ちた「祖谷」集落がある。

「祖谷」は、私にとって若い時の思いでの場所の一つで、妻と二人で四国を自転車で旅をしたおり「祖谷」を訪れている。
その時は、大歩危から自転車を輪行してボンネットバスに乗り、狭い険しい山道を走り、小さな民宿で一泊し、秘境の地をはじめて味わった。
今は、道路も整備されホテルも数軒あり、観光客用の秘境の風景にそぐわない人工的な施設も造られ、若い時に訪れた風景から一変していた。

ただ「かずら橋」は当時と変わらずスリルのある橋で、名物の「あまめ」の塩焼きも当時と変わっていなかった。

2015年4月4日撮影

【第9回】阿波国 吉野川流域の風物
【第9回】阿波国 吉野川流域の風物

確かに祖谷の観光の中心部辺りは、観光客も多く風景も変貌していたが、中心部を離れるとやはりここは秘境だった。

2015年4月5日撮影

【第9回】阿波国 吉野川流域の風物

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