竣工:2024年7月
延床面積:90.63㎡(27.41坪)
この建物は、京都市左京区鹿ケ谷の近くに「哲学の道」が走る、閑静な住宅地に建ちます。 こちらのお施主様、実は11年前にも京都府南部の小さな集落内でこだわりの「土壁の家」を弊社で建てさせていただいています。 ところがお仕事などの関係で京都市内に転居されることになり、一時マンションにお住まいでしたが、その後、築100年ほどの古民家を購入されました。
そして、その古民家の再生工事を再びツキデ工務店にご依頼頂いたもので、誠にありがたいことです。
その購入された古民家。

再生した古民家の外観。 下屋の外壁は「焼き杉板張り」、外構には道からの視線を遮るために高めの板塀を設けています。

板塀に設けた板戸をあけると右手が玄関、玄関ポーチは木製のデッキ、玄関横には広めの庇を付けた自転車置き場があります。そして左手は前庭です。

玄関引き戸は1枚ガラスの「框戸(かまちど)」で、ガラスは内部から前庭が眺められるように透明ガラスです。

玄関内部から透明ガラス戸を通し、木製のデッキ越しに見える前庭。

そして玄関を入ると、廊下の先にも裏庭が見えます。


間取りは、2階からの眺めがいいことから、家族が集うLDKは2階にあり、1階にプライベートな部屋と水回りを配しています。
玄関横に奥様の部屋があります。 部屋の出入口戸は「戸襖(とぶすま)」で、紙はお施主様が選び購入された漆塗りの手すき和紙が貼られています。 その横は洗面・トイレの出入口で、戸はこれもお施主様が購入されたご趣味である古建具が再利用されています。

四畳半の広さの奥様の部屋。 以前の家もそうでしたが、お施主様は、建具だけではなく家具類も古いものがお好きで、部屋にはそんな家具が置かれていました。

隣の洗面室。 洗面化粧台と収納棚は作り付けで、化粧台の下にも古い家具が置かれていました。 また、左側のトイレの戸も漆塗りの和紙を貼った「戸襖」。

浴室はユニットバスではなく、在来工法での浴室で、壁・床は御影石張りです。

脱衣室と浴室

お子様がお二人おられ、クローゼット付きの四畳半ほどの広さの子供室が2室あります。 それぞれの部屋の窓からも庭が見えます。

ご主人の部屋は撮影を控え、次に階段を上がり2階へ。
2階の南に面する居間。 居間の入口も古い「腰板付ガラス戸」で、ここにも古い家具が置かれています。

南に面する居間の窓は、木製建具でそこに「上げ下げ障子」を設けています。 内部の仕上げは、床・天井は吉野杉の板張り、壁は「土壁中塗り仕上げ」です。

物入れの「漆塗りの和紙」、「古い建具」、そして壁の「土」がもつ質感が古い家具とよく合います。


南側の窓の前には木製のベランダがあり、そこから東山が望めます。

杉板張りの居間の天井は「船底天井」で、この家に元から架けられていた丸太の小屋張梁を「現わし」にしました。

ダイニングキッチンの90cmほどの幅広板のテーブルは、作り付けで背面が収納になっています。


テーブルの上に吊るされている白熱球のペンダントは、以前の家でも使われていたもので、オーダーされた照明器具です。

キッチンに設けられた北側の窓と木製のベランダの勝手口から木々の緑を目にすることが出来ます。 またキッチンの横には、電気を必要としない「無電ペレットストーブ」が設置されています。

以前の家では、薪ストーブを据えられていたのですが、今回は京都市内の住宅地であることもあり、煙の心配が比較的気にしなくてもよいペレットストーブにされました。

キッチンの奥にパントリーがあり、冷蔵庫も見えないようにここに納まっています。 建具は、これも古い「目板格子」が使用され、格子から漏れる灯がきれいです。

今回、訪問させていただいたこのお宅、日本の伝統的な素材である「木・土・紙」がふんだんに使われ、その中に「古い家具・建具」がなじみ、『住む』を楽しんでおられる様子が伺えました。

