竣工:2026年1月
延床面積:218.99㎡(66.3坪)
写真撮影:2026年4月
この建物は、京都府南部の「精華町」ののどかな風景が広がる地に建ちます。

広い敷地内には、「母屋(おもや)」と二つの「離れ屋」、そして「小屋」が建ちます。 「母屋」は、お施主様のおじい様が55年ほど前に建てられたもので、その後、お父様が何度か改修されていますが、造りはこの地方の農家建築特有の重厚なものです。

また間取りは、幾つもの畳敷きの座敷が建具を介してつながり、建具を開け放つと開放的になる様式でした。

今回その「母屋」の和の趣がある要素を活かしながら、再利用できるものは極力利用し、新たにお施主様の生活様式とお好みに合わせ、1階部分を中心に改修をさせて頂きました。 玄関の外部ポーチは既存のまま、内部は土間のタイル・玄関式台・竿縁天井も再利用し、また建具も再利用しています。聚楽調の壁は塗り替え、造り付けの下駄箱を新たに設置しました。

畳敷きであった「玄関の間」は、床は吉野桧の板張りとし壁は漆喰仕上げです。 建具も再利用し、隣接するダイニングとの仕切りには、夏に向け風通しのよい「葦戸(よしど)」がはめられています。 端午の節句の時期とあって、「玄関の間」の正面には立派な武者人形が飾られていました。


「玄関の間」とつながる吉野桧張りの広々としたダイニングキッチン、ここでも天井は既存の竿縁天井を再利用しています。

55年もの歳月を経た柱・造作材、竿縁天井や建具・欄間など本物の古き良きものは、時を経なければ出ない味を生みます。 そして、それらを活かすことにより趣のある空間となります。


また無垢の家具、古くからあった良きものを置き飾ることで、それらが部屋に溶け込み、趣と共に空間の質を高めます。


そして、よく手入れされた和風の前庭は、そんな空間と一体となり癒しを与えてくれます。


以前のダイニングキッチンは、お父様が30年ほど前に改修されたものですが、建物の北東角にあり9帖とさほど広くなく暗く、廊下で隔たれていたこともあり他の生活空間とのつながりもあまり良くありませんでした。

今回の改修でのダイニングキッチンは、南の庭に面し明るく、広さもパントリーを含め18帖の広さで、使いやすさと共に他の生活空間とのつながりも良くなりました。


そしてキッチンの背面には、ペレットストーブが据わり生活の場を暖めてくれます。

キッチンと繋がるパントリーに置かれた古い「水屋」は、存在感があります。 そのパントリーから脱衣室・浴室、ユーティリティーにつながります。


ダイニングとつながる床の間・仏間がある座敷は、畳を表替えし襖は張替え、壁を塗り替えました。


キッチンと座敷に建具を介してつながる居間兼客間。



以前、応接間であった部屋は、趣味の部屋になりました。 マントルピースは、取り壊さず今はそこにテレビがおさまっていました。

55年前におじい様が建てられた「母屋」、次に子が受け継ぎ、そして今回孫が先祖の遺産を大切にしながら再生し住み継いでいく、素晴らしいことだと思います。 敷地内の畑では、幾種類かの野菜と果樹を育てておられました。 のどかな風景の中で田舎生活を楽しんでおられる様子が伺えました。

