新しい住まいの設計 2002年7月号
以下、「新しい住まいの設計」(扶桑社)7月号より抜粋
竹林を望む五角形の変形敷地を生かし 吉野杉をふんだんに使って建てた家。 「気持ちがいいの一言につきますね」 Kさんの家
京都・長岡京市
設計=(株)ツキデ工務店
いい素材、いい設計、いい職人がそろっていい家が建ちました
Kさんの家は、美しい竹林が広がる丘陵地の一角にあります。その竹林に向かう舟のへさきのように、居間が三角形に張り出し、大きな窓が青々とした竹林の風景を切り取っています。
敷地は三角おむすびを平たくしたような変形五角形。しかも南と西は隣家にふさがれています。環境はいいけれど、この敷地にいい家が建つのだろうか。ご夫妻はツキデ工務店に相談しました。新聞広告で見たすがすがしい木の家が、印象に残っていたからです。
ご主人は愛媛県の出身で、藁葺き屋根の民家で育ちました。転勤を繰り返しマンション住まいを続けていても、子供時代の木の家の記憶は生き続けていました。
「家を建てるなら、大工さんと相談しながら、木の家を建てたいと思っていたんです。自分で設計もしてみたかったですし」
そんなご主人にとって、ツキデ工務店は最良のパートナーでした。社長の築出恭伸さんは家具職人の息子。子供の頃から木に触れ、大学では建築を学び、東京の大手設計会社や和風住宅の大御所が顧問を務める設計事務所で働いた経験もあります。そのうえ大工修行を3年。25年前に工務店を設立してからは永田昌民さんや三澤文子さんなど、木造建築に一家言ある建築家と仕事をし、「ええとこ取り、させてもろてます(笑)」
素材を選ぶ目と、設計力と、施工の技術。3つがそろえば鬼に金棒。梁や柱は吉野杉、床や土台は檜、壁には珪藻土や月桃紙。この家には自然素材がふんだんに使われています。変形敷地は設計の工夫で克服し、腕の確かな職人さんが施工。古い木造建築が数多く残っている京都周辺には、今もいい職人さんがたくさんいます。
「ウチの大工は手ガンナをかけます。そうすると木肌がピカーッと光ってくる。電気カンナの仕上げとは全然違う。木がいいと、大工が張りきる。すると、ほかの職人もつられて、ええ仕事しよる」
築1年が過ぎた今も、家の中は木の香りが満ちています。「気持ちがいいの一言につきますね」とご夫妻は口をそろえます。
(撮影/垂見孔士 取材・文/阿部ルミ子)