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【第16話】 「木・竹・土・わら」でつくられる荒壁の家

「木・竹・土・わら」の材料でつくられる「荒壁の家」、それらの材料は古くから日本各地にある身近な自然素材として私たちの暮らしに深く関わってきました。
「土」は、調湿効果があるとともに蓄熱性があり、「外断熱」との組み合わせることにより快適な温熱環境が可能で、日本の気候と合う優れた特徴があります。
今回は「左官の技」、とりわけ今や希少となった伝統工法である「貫(ぬき)工法」で「竹小舞(こまい)」を編んだ「日本壁」の下地「荒壁」の特徴と仕事を新築工事の実践例で紹介します。

【第16話】 「木・竹・土・わら」でつくられる荒壁の家
「貫工法」による「荒壁」下地の「日本壁」の優れた特徴
  • 材料である「木・竹・土・わら」は、日本各地にある身近な自然素材です。
  • 「伝統軸組工法」における「貫工法」は、地震の際、地震力を吸収する「制振効果」あるとともに、木の「めり込み」と「粘り」で地震力を減衰させます。
  • 「土」は、調湿効果があるとともに蓄熱性があり、「外断熱」との組み合わせることにより快適な温熱環境が可能です。
  • 一般的には、土壁の壁厚は50~60mmほどですが、100mm以上にすることで断熱効果が得られます(夏の蔵は涼しい)。
  • 耐火性があります。

以上のような「荒壁」の優れた特徴が考えられます。

「貫工法」

一般的には、壁となる柱と柱の間に「貫(ぬき)」と呼ばれる105mm×15mmの杉板を3~4本通し、柱と貫の隙間に「楔(くさび)」を打ち込み締め固めます。
今回紹介する新築工事では、杉の「貫」の寸法を105mm×27mmと太くし、1階は4本、2階は3本としました。

ツキデ工務店|【第16話】 「木・竹・土・わら」でつくられる荒壁の家

柱と「貫」の接合部である「仕口(しぐち)」は、「渡り欠き」という加工を施し、貫を落とし込み、柱と貫の隙間に「楔(くさび)」を打ち込みます。

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「竹小舞(たけこまい)」を編み

柱・梁・土台に「えつり」を掻(か)き、そこに半間の柱間に縦に3本、横に8本の「えつり竹(間渡し竹)」入れ込み、「下地竹」を編んでいきます。

そしてまずは縦、次に横の「えつり竹」に「下地竹」を「しゅろ縄」で編んでいきます。

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いつもお世話になっている「竹小舞編み」の職人さんであるKさん、当時のお歳は70歳、荒壁の家が減り、後継者もなく今や貴重な存在です。
何とかこの技術を残していく必要があることから、今回、技術伝承の資料としてできるだけ詳細に撮影しました。

そして竹小舞が、きれいに編みあがりました。

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「荒壁」の土づくり

昔は、荒壁の家を建てる場合、敷地内か自宅の畑や田んぼで土を盛り、そこに水をはり土づくりを行っていたのですが、いつのころからか「ドロコン屋」という練った土を販売する店ができ、これまでに当社もそこから土を購入していました。
近年は「荒壁の家」が激減したことから廃業や取り扱いをやめた店が多くなっていますが、今回は昔ながらの土づくりから始めようということになりました。
幸い会社に近い京都市伏見区大亀谷という所で荒壁用に適した土を手に入れることが出来ることから、そこで土を購入し土づくりが始まりました。

土造りは季節にもよりますが、荒壁を塗る数か月前から始めます。
まずは、塗った荒壁が乾燥しても割れにくいように土のつなぎの「すさ」となる「藁(わら)」を準備し、「押し切り」という道具で藁を10cm程の長さに切ります。

トラックに積める大きさの(1880×1580×490)の箱を木で4箱造り、それにブルーシートを敷きその中に土を入れ、10cm程に切った「藁すさ」と水を入れ、クワでかきまで足で踏み、土と藁が均一に混ざるようにします。
一定に混ざると土が乾燥しないようにブルーシートをかぶせ、土を寝かせ藁を腐らせます。

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ひと月ほど後に再度、「藁すさ」と水を混ぜて練り、またブルーシートをかぶせ再度寝かせます。

ツキデ工務店|【第16話】 「木・竹・土・わら」でつくられる荒壁の家

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「荒壁塗り」

現場では「竹小舞」が編み上がり、いよいよ寝かした手作りの土で荒壁塗りです。
この日は、左官屋さんが2名と土を運ぶ「手もと」の「てったい」さん4名で行います。
寝かせた2箱の土を積んだトラックを建物に横付けし、土をバケツに入れウインチで吊るし上げ運び、まずは2階の外部から塗り始めます。

土は、「さいとり」という道具に乗せ、左官屋さんの「鏝(こて)板」を目がけ差出します。

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さいとり棒

二人の左官屋さんと「てったい」さんとの呼吸はぴったり。作業は順調に進みます。

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竹小舞の裏側は、塗り付けた土が竹小舞に食い込みグニュととび出しています。 それをこの辺りの職人用語で「へそ」と言うそうです。このまま乾き固まると「裏返し塗」の時、塗りにくいので飛び出た部分を平たくはります。

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天候に恵まれた夏場ということで、ひと月ほどで表面はよく乾き、「藁すさ」を多めに入れたこともあり荒壁はさほど割れていません。

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表塗りの際、竹小舞の間からグニュと出た「へそ」をはった裏側。
ちなみにコンセントのボックスなどは、竹小舞を編む前に取り付けます。
ボックスの厚みは、通常は35mmですが、「真壁」で柱面と仕上がり壁との15mmの「ちり」を確保するために22mmの薄型を使用します。

柱や土壁が乾燥し「やせる(収縮する)」と柱と土壁の取り合いに隙間ができるとまずいので、土が柱の中に食い込むように「ちりじゃくり」をしています。

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そして「裏返し」。
「裏返し」の作業も前回と同様、息の合ったメンバー行われ、順調に終えることができました。

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今回、土造りから行った「荒壁の家」。
木・竹と土を用いた日本の伝統建築の「貫工法」による「左官の技」、2020年12月17日「伝統建築工匠の技 木造建造物を受け継ぐための伝統技術」が世界文化遺産にも登録されましたが、その優れた世界に誇る技術を途絶えさせてはなりません。

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今回の建物ではないですが、荒壁の家の完成写真はこちらです↓

> 住まい手さん宅訪問「京田辺の土壁造りの家」

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