竣工:2019年12月
この建物は、大阪府茨木市の市街地の中で、今も残る古くからの集落の中に建ちます。
広大な敷地に長屋門・主屋・蔵二棟・納屋があり、今回長屋門と主屋を中心に改修させていただきました。
主屋は、たぶん明治期に建てられたものであると思われますが、これまでに何度も増改築され手が加えられています。
長屋門を入ると「つし2階」主屋と立派な庭が現れます。
この時期、秋色に染まる立派なお庭。
当時の玄関は、客人用の「式台玄関」と家人など用の玄関に分かれていたと思われますが、いつの頃か改修され現状は式台玄関があったところは応接間に代わり、家人用の玄関のみとなり、そこには引き違いの木製建具2枚がはまっていました。 今回、往時はまっていたであろう片引きの「腰板付障子戸」を再現しました。
「ニワ」と呼ばれる6畳ほどの土間を含む玄関内部は、12畳ほどの広さだったのですが、ある時期にその一角に四畳半のお茶室が設けられました。
そのお茶室は今回、赤松の床柱などを残し、畳を板張りし子供部屋としました。
「ゲンカンニワ」から「目板格子戸」は開けると「トオリニワ」があり、「カマド」いわゆる「おくどさん」がある土間に繋がり、左手に「ダイドコ」があるのが、農家型民家の間取りの特徴ですが、今回の改修前にすでにこの部分はすべて板間のLDKに改装されていました。
ただ「おくどさん」がある土間には、太い丸太の「煙返し」があり、その関係で天井高さが取れないので居間部分と板張りのDK部分の床には20cmの段差がありました。
今回の改修では、その「煙返し」の丸太に虫害があったこともあり、一回り太い丸太に取り換え、なおかつ高さを30cm上げ、床の段差を解消しました。
今回の工事で「煙返し」を取り換え上げる仕事が腕の見せ所で、大変うまく収まりました。 あたらしく入れ替えた赤松の丸太は、長さが5.6m、直径は末口30cm、元口40cmの丸太で既存の丸太より一回り大きく、27cm幅の「太鼓」に摺っています。 この丸太の重さは400キロ近くあり、8人がかりで家の中に取り込みました。
洗面所とトイレ。 トップライトからの採光が効いています。
座敷に隣接する応接間。 ここは、元客人用の「式台玄関」だったと思われます。 今回、床はじゅうたん、壁・天井は布クロスを張り返しましたが、建具などは既存のままです。
縁側の屋根は、銅板の「一文字葺」だったのですが、酸性雨の影響か小さな穴が開いていたので、ガリバリウム鋼板の「一文字葺」に張り替えました。
再生し生まれ変わり、これから次の代へと引き継がれていきます。
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