家づくりの考え

構造について
木材のこと
強い木の家をつくるには、良材を適材適所に使い分けることが大切です。
ツキデ工務店は、日本有数の良材で ある奈良吉野の杉、桧を「あらわし()」で使います。
梁材は百三十年生程の天然乾燥の杉、柱材は八十年生程の桧を主に使用しています。
また吉野杉は淡紅色で香りもよく、年輪が緻密な為、構造材はもとより造作材としても優れています。
この良材は気候や土壌はもちろん、吉野林業五百年の歴史の中で培われてきた人の手による、たゆまぬ工夫によって成し得たものです。
あらわしとは、木造建築で柱や梁などの構造材が見える状態で仕上げる手法です。
密植
吉野林業の特徴の一つは密植です。
他の林産地では1g当り三千から四千本程度植林することが多いのですが、吉野では八千から一万本植林します。
密植することにより一本一本が競うように上へと伸び、木目が通り年輪が緻密で均一な木に育ちます。
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下多古 百年生の吉野杉
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間伐
木々の間隔を適度に保ち、太陽の光が入り易いように育林作業が行われます。
そして最終的には二百数十年生の木が林立する山が形成されます。
梁材はそうした山の百二〜三十年で間伐された杉材を使用します。
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百二〜三十年生の杉の伐採の様子
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葉枯らし乾燥
尾根側に向け伐採された杉は、葉をつけたまま数ヶ月放置され、木に含まれる水分を蒸散させます。
この手法を「葉枯らし乾燥」といいます。
葉枯らし乾燥のことは「渋抜き」ともいわれ、渋抜きすることにより吉野材の特徴である色艶が得られます。
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葉枯らし乾燥
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山から原木市場へ
葉枯らし乾燥された杉材は、4〜6mの長さに玉切りされます。
この地方の山は急峻なため、ヘリコプターにより山の土場まで搬出されることが多く、土場からトラックに積み込まれ原木市場へと運ばれます。
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原木市場の様子
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原木市場から製材所へ
原木市場で競り落とされた丸太は 製材所に運ばれ製材されます。
一本一本違う丸太の特徴を見極め、できるだけ商品価値の高い製品を挽くためには、熟練の製材技術と勘が必要です。
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製材所での製材の様子
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天然乾燥
製材された梁材は、桟積みにして屋外で最低一年は乾燥させます。木は乾燥が進むと強度が増していきます。
また乾燥することにより収縮し、梁材は芯に向かって割れが走りますが、これは乾いた証です。
天然乾燥にこだわる理由は、時間をかけて乾燥することで吉野杉の持ち味である色艶や香りを活かすことができるためです。
それに対し、人工乾燥()の場合はせっかくの吉野杉の色艶や香りを活かすことができません。ただし天然乾燥の場合は、木によって乾燥にばらつきが出ます。
それらの木材を使う際は木を知りつくした熟練大工が適材適所に振り分けをし、それに合わせた加工をすることで天然乾燥材を最大限に活かします。
人工乾燥とは、材木を乾燥庫に入れ人工的に高温の熱を加えることで、乾燥時間を大幅に短縮し、均一な含水率を得ることができる乾燥方法です。
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梁材の天然乾燥の様子
熟練大工の技
日本は世界有数の森林国です。
豊かな森林資源を活用し、世界に誇る木造建築文化が築かれてきました。その象徴の一つが世界最古の木造建築である法隆寺です。
そしてそれらの木造建築を築き上げてきたのは職人たちであり、その要は「大工」でした。
木造建築の技術は時代の流れの中で変わりながらも、職人たちの手により現在に引き継がれています。
近年、構造材加工は機械まかせのプレカットが主流ですが、ツキデ工務店は伝統に培われ、引き継がれてきた「大工」の知恵と技を活かした「手加工」にこだわります。
木材の特性を知り、木の良し悪しを見分ける目をもつ「大工」が、材を最大限に活かして自らの手で仕上げていく、それが強く安全に住める家づくりにつながります。
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墨付け
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手鉋仕上げ
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継手加工
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継手加工
木組へのこだわり
プランの段階で柱の位置、梁の組み方を考え、鉛直方向・水平方向に無理のない力の伝わり方を検討します。
また柱、梁が「あらわし」になる真壁づくりの家は木組の見せ方も重要です。 柱、梁の組み方によって家の印象ががらりと変わります。
木組の力強さと、造作に求められる繊細さを「あらわし」で醸し出します。
継手・仕口について
梁や土台を長さ方向に継ぐ接合を「継手」といいます。
また柱と梁、梁と梁などの直角方向あるいは斜め方向の接合を「仕口」といいます。
ツキデ工務店ではこのような接合 部は、大工の手刻みによる伝統的な継手・仕口によって木と木を締固め、粘りのある構造にします。
あわせて接合金物を使うことにより、一層の強度を確保します。
例えば伝統的な柱と梁の仕口として「長ホゾ差し込栓打ち」という手法があります。
これは柱のホゾを100mmの長ホゾとし、梁のホゾ穴に差し込み、それぞれの材に掘られた穴 (15~18mm)に「込栓(こみせん)」とよばれる堅木を打ち込むことにより引き抜きを抑えます。
その際、それぞれの込栓の穴の位置を3mmほどずらすことにより、材同士を引き付け締固めます。
このような木造の伝統的な接合方法を取り入れることによって、金物接合だけでは出せない、粘りのある構造が得られます。
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長ホゾ差し込栓打ち
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長ホゾ差し込栓打ち(組んだところ)
大黒柱・大梁について
ツキデ工務店が標準とする、柱・梁の樹種と寸法は、柱は 八十年生程の約四寸(117mm)角の吉野桧、梁は百三十 年生程の120mm×240mmの吉野杉です。
大きな力がかかる木組の要となる部分には「大黒柱」や「大梁」を入れます。
これらの大黒柱や大梁は、空間に力強さを与え、木組の美しさを象徴する存在になります。
木組を考えることは、強く安全な家をつくるとともに、構造美を表現する上でとても大切です。
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改修工事で丸太梁を入れた例
耐震性能
建物の耐震性能を表示する基準として「耐震等級」という基準があります。現行の建築基準法で求められる耐震性能は、「耐震等級1」と同等とされています。
ツキデ工務店は、それを上回る「耐震等級2」以上の強度を確保します。
「耐震等級1」は数百年に一度程度発生する地震力の1.0倍の力に対して倒壊・崩壊しない程度、「耐震等級2」はその1・25「耐震等級3」は1・5倍の地震力に対して倒壊・崩壊しない程度の建物とされます。耐震性能を確保するため、以下のことを検討します。
地盤
地盤は構造を検討する上でとても重要です。
いくらしっかりとした建物を建てても、地盤が悪ければ建物は傾いたり沈下する可能性があります。
そこでまずはスウェーデン式サウンディング試験という地盤調査を行い、地盤の許容応力度や自沈層の有無などを調べます。
その結果、地盤が良くないことが分かれば、状況に応じて地盤改良を実施します。
基礎
基礎は建物の荷重等、軸組から伝わる力を地盤に伝えるとともに、建物を地盤にしっかりと固定する役割を果たしています。
地盤調査により地盤の許容応力度を確認し、構造計算によって、地盤や建物に最適な基礎を計画します。
軸組
プランニングの段階から、梁の組み方や柱の位置を検討します。
構造材「あらわし」の家は軸組が仕上として見えるので、柱・梁が構造的にも意匠的にも最適であるように計画します。
構造金物
木と木の接合部は大工の手刻みによる伝統的な継手・仕口によって締固め、粘りのある構造にすることが基本ですが、計算により金物補強が必要な箇所が出た場合は、構造金物で補完をし、より一層の強度を確保します。
耐力壁と水平構面
木造在来工法の建物は、地震や強風などの横からの力に対して、耐力壁が必要です。
一般的には壁量計算や四分割法によって、耐力壁がどれだけ必要か、その配置に極端な偏りが無いか検討します。
これに加えて水平構面や接合部の強度について検討し、建物が受ける力をしっかりと地盤に伝えるように計画します。