竣工:2020年8月
この建物は、お施主様のお父様が昭和48年に自らが設計し、大変こだわって建てられた建物で、お施主様にとってもここで育った思い出多い建物です。
一時期、空き家となっていたのですが、この建物を朽ちさせたくないという強い思いから再生工事を計画されました。
そして今回、残すべきところは残しながらお施主様のこだわりを新たに吹き込み、より快適に住まえる家にするために間取りを変え、建物性能も向上させ、付加価値を高め、新たに生まれ変わりました。
建物の改修工事に際しての客様のご希望は、仕上げは繊細な「京風」にとのことでした。
そこで随所で数寄屋風に仕上げています。 門は以前、門柱が石張りで門扉がアルミ製でしたが、材を細く見せた「数寄屋門」としました。
また道路も面する塀は、既存の塀を利用しての「杉皮張り」です。
門から玄関へと庭と石畳が続きます。
玄関は、既存の玄関などがあった建物の一部を減築し、新たに間口がある庇も設けここも数寄屋風に仕上げています。
玄関土間の天井は、玄関庇の化粧垂木がそのまま内部に延びているように見せた「勾配天井」。
「玄関の間」の天井は、「赤杉柾板」に「竿」を「吹き寄せ」にした「竿縁天井」。
床(とこ)は、「袖壁」の壁止まりが「煤(すす)竹」で「下地窓」を設けた「ふくろ床」。 床柱は「赤松皮付丸太」、「地板」にはツキデ工務店がストックしていた松の古材を再利用し、地板の「蹴込み」に「ごま竹」を用いています。
実は床の上部は、居間からの階段でして、床の右上の階段が一部斜めに出た部分を袖壁で隠しています。
また「脇床」の「地袋」の襖は、奥さんがお好みの「京から紙」の「つぼつぼ」です。
玄関に隣接するトイレ。 工事途中にお施主様が、トイレの戸を「舞良戸(まいらど)」にしてほしいとの要望があったので、舞良戸の板は玄関の天井に用いた180mm巾の赤杉の「柾板」を使っています。
また、壁の「腰板」は、当初110mm巾の「板目」の杉板張りの予定だったのですが、舞良戸とそろえ同様に赤杉の「柾板」を使い、「ごま竹」で押えたちょっと贅沢な仕上げのトイレです。
また障子の上下は「雪見障子」風に上げ下げが出来、外部からの目線を遮りながら採光と目線の抜けを得ることができます。
LDKに隣接する座敷の形状は既存のままですが、以前はべニア下地の貼物の「目透かし天井」だったのですが、今回、無垢の杉の「竿縁天井」に貼り替えしました。 襖の貼り替えはここでも「京から紙」を用いています。
座敷の縁側に掛けられた「御簾(みす)」も「簀戸(すど)」同様、この家で当時から使われていたものです。
建物の内と庭をつなげる縁側。 建具は、既存の木製建具を再利用し、断熱を兼ねて内側に「引き込み障子」を設けました。
東と西側の窓から庭を楽しむことができる明るく開放的な寝室。 サブリビングとしても使えます。
2階の子供さん達用の部屋。 お持ちの家具がいいので写真が映えます。
庭は、「庭づくり三宅」が手掛けました。 以前、樹木が多すぎた庭を整理し、既存の樹木を活かしながらうまく剪定し、一部新たに草木を加え、まさに「庭屋一如」建物と庭が融合し一体となるように仕上げてくれました。
工期は予定していた以上にかかりましたが、お施主様からは大変満足しているとの感謝の言葉をいただき、ただただ工務店冥利に尽きます。