【第8話】一年の暮に
「けっこう汚れていますね」と設計部の社員が、雑巾で社屋の床を水拭きしています。社屋は築38年の古家を改修した建物で、お客さまに提案している無垢材や自然素材などをたくさん使っています。それらを永く大切に使っていきたいと言う思いもあり、毎朝の簡単な清掃とはべつに、年に三回ほど皆で普段できない場所の掃除を続けています。今回は、手入れのことや、永く住み継がれる木の家の特徴を紹介します。
気をつかわない「木」
例えば吉野杉のフローリングは、年月を重ねて色艶は深みを増し淡紅色から飴色へと変わりますが、暮らしの細かなキズ跡も一緒に馴染み目立たなくしてくれます。また、新しいうちが一番美しい製品とは違い、使い込まれて風合がでる木や土など自然素材は、経年変化によって魅力を増す素材です。それらは、住まい手にとって意外と気をつかわせず付き合っていける素材と言えます。
床材:杉
無垢の木のフローリングは呼吸しているので、空気の乾燥している時期はフローリングの隙間が 広くなったり、また湿度の高い時期になると隙間は狭くなったりします。
床材:桧
無垢の木のフローリングも畳の上も、掃除機ではなくほうきで掃除する住まい手さんは少なくありません。棕櫚(シュロ)のほうきは床を傷つけず、永く使い続ければ棕櫚が持つ油分で艶が出ます。そして軽くて使いやすい、これで十分きれいになります。また、無垢の木は静電気が発生せずホコリがつかないため、掃除のあとの気持ち良さは長く続きます。
深いキズは濡れたタオルやアイロンの蒸気をあてて、へこんだ木を膨らませます。
水まわりの木には時々、浸透性のワックスを施すとシミやカビがつきにくくなります。
生かせる材料
一見傷んだように見える古くから使われている物や、暫く人の手が入っていないものでも、少し手直しすれば生かせる材料があり、古民家などを解体する前、使えそうな木材や建具がある場合は取り置き保管しておきます。それらは、今でも貴重な材料であったり、職人の丁寧な仕事で作られたもの、また住人の思い出あるものだったりします。思いを込めて作られたもの、大切に住まわれた家は、形をかえても残り続けると思います。
以前の建物で使用していた欄間を再利用
ご主人のお爺さんが絵を描くときに使われていたヒバの板をテーブルに再利用
以前の建物で使われていた真鍮の取手と引手を台所収納へ再利用