【第7話】見上げれば 「天井」
天井と言えば、子供のころ寝て見る天井の木目が何かに見えてきたり、板の貼り方の規則性が気になったり、そうしている間に何時の間にか寝てしまっていた記憶が今も残っています。良質な材料は人の手で大切に育てられていることや、ものづくりは職人たちの誇りであること、天井一つにしても創意工夫がなされていることを、大人になってから少し知りました。今回は木の家の天井を紹介します。
天井は敷地や暮らし方、そして好みによって設計段階で検討されます。高さ・形状・素材など、それぞれの仕様により部屋の印象は大きく変わります。例えば、一階の部屋に陽が入りにくい敷地の場合、吹抜けを設け二階からの採光を得たり、視線が低くなる床座の和室では天井を少し低くし落ち着いた空間をつくります。また、庭や借景のある家には、風景を取り込めるよう開口部の高さから天井高を決めたり、好みの木材で板張りにすることもあります。天井の高さや形状は外観にも関係し、建物全体にとって格好の良い高さ関係が守られているかも大切です。こうして決まった仕様を、次に大工や職人達が形にしていきます。
吉野杉・桧の梁をそのまま「あらわし」で使います。「あらわし」とは、構造材をそのまま意匠としても見せることで、力強く、鉋で仕上げた木肌は淡紅色で香り高く木の家の象徴となります。 大工は製材所から運ばれてきた構造材を、木配りし使う場所を見定め、墨付け、刻み、鉋で仕上げます。この工程が、梁あらわし天井の要処の一つとなります。
舟底天井とは、船の底の形をした天井を意味し、空間が広く高く感じることができます。またリビングなどに設ける吹抜けも同じく開放的な空間をつくります。
同じ板材でも節の有り無しや、材料の違いはあります。大工は、良い材は目を引く所へ、そうでない材は目立たない所へと、それらを木配りしまた納まりの良い割付寸法を計算します。
大工の手から離れ完成してからは、床や家具などと違って直接に触れ感じる事はなくとも、手が届かない天井によせた思いは、木の家の心地よさへと繋がっているように思います。